本書は、マンション価格の高騰を感情やバブル論で片づけるのではなく、富の分布・税制・国際比較という複数の軸から説明しようとする。
「なぜ高いのか」ではなく、「なぜ買われ続けているのか」を問う姿勢が一貫している。
富裕層の厚みと格差の同時進行
日本は、純金融資産100万ドル以上の保有者数で、アメリカに次ぐ規模を持つ国だ。
その数は約365万人にのぼる。
一方で、相対的貧困率は15.7%と決して低くない。
富が一部に集中する一方で、可処分所得に余裕のない層も広がっている。
この二重構造こそが、不動産市場を理解する前提条件になる。
超高額マンションが選ばれる理由
規制は強化されつつあるものの、超高額マンションが相続税対策として選ばれてきた理由は明確だ。
高い容積率によって戸あたりの土地持ち分が小さくなり、路線価評価との乖離が生じる。
さらに、高層階になるほどその乖離は大きくなる。
結果として、実勢価格に比べて相続税評価額が低く抑えられ、資産圧縮の手段として機能してきた。
これは投機というより、制度に内在する歪みを利用した合理的行動と見るべきだろう。
日本の不動産は本当に高いのか
本書が示す国際比較も示唆に富む。
東京・赤坂を100とした場合、北京は124、香港は242。
主要都市の中で、日本の不動産価格が突出して高いとは言いがたい。
むしろ逆に、日本の不動産は相対的に「安い」部類に入る。
この点は、国内だけを見ていると見落とされがちだ。
賃貸市場との歪な関係
興味深いのは、売買価格が相対的に安い一方で、賃貸はそれほど安くないという点だ。
結果として、「安く買って高く貸す」という裁定取引が成立しやすい市場になっている。
海外投資家や富裕層にとって、日本の不動産は
価格面でも、運用面でも合理的な投資対象に映る。
タワーマンションは「買い」なのか
利回り3%前後を確保しつつ、売却益も視野に入るタワーマンション。
少なくとも、現在の構造が続く限りにおいては、必ずしも割高とは言い切れない。
本書は、無条件に買いを勧めるわけではない。
だが、価格上昇を「異常」と断じる前に、
なぜその価格が成立しているのかを理解すべきだという立場は一貫している。
結びにかえて
『なぜマンションは高騰しているのか』は、
不動産価格を善悪や感情で語ることの危うさを教えてくれる。
格差、税制、国際資本、賃貸市場。
それらが重なり合った結果として、現在の価格がある。
高いか安いかではなく、
なぜそうなっているのかを考えるための一冊として、冷静に読む価値がある。
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